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最高裁判所第二小法廷 昭和47年(オ)1316号 判決 1973年5月25日

主文

理由

上告代理人松田長茂の上告理由第一点1および2について。

原審が適法に確定した事実関係のもとにおいては、訴外合資会社自動車練習所が、被上告人に吸収合併された南陽相互銀行と昭和四一年七月二五日締結した消費貸借契約上の債務について、同年八月二五日になすべき第一回の分割弁済金支払いを怠つたため、右消費貸借契約とともに締結された所論の期限利益喪失約款付相殺予約によつて、右債務の第二回目以降の弁済について期限の利益を喪失したものと認めるべきものである。そして、たとえ所論のように被上告人が右債務について充分な物的担保を有していたとしてもその理は異なるものではなく、また、被上告人が右消費貸借契約上の債権を反対債権としてなした相殺が権利の濫用に当たるともいえない。したがつて、これと同趣旨の原審の判断は、正当として是認することができる。原判決に所論の違法はなく、論旨は採用することができない。

同第一点3および第二点について。

債権が差し押さえられた場合において、第三債務者が債務者に対し反対債権を有していたときは、その債権が差押後に取得されたものでないかぎり、右債権および被差押債権の弁済期の前後を問わず、両者が相殺適状に達しさえすれば、第三債務者は、差押後においても、右反対債権をもつて被差押債権と相殺をなしうるものであり(最高裁判所昭和三九年(オ)第一五五号、同四五年六月二四日大法廷判決、民集二四巻六号五八七頁)、このことは、差押債権者が被差押債権につき取立命令を得た場合と転付命令を得た場合とによつて異なるものではない(最高裁判所昭和四六年(オ)第一一五号、同四六年一一月一九日第二小法廷判決裁判集民事一〇四号四一三頁)。所論は、右と異なる見解に立つて原判決を非難するものにすぎない。原判決に所論の違法はなく、論旨は採用することができない。

(裁判長裁判官 岡原昌男 裁判官 村上朝一 裁判官 小川信雄 裁判官 大塚喜一郎)

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